集団フッ素洗口・塗布の中止を求める意見書
2011年(平成23年)1月21日
日本弁護士連合会
意見の趣旨 (本文の1〜2頁)
1 う蝕(むし歯)予防のために,保育所,幼稚園,小学校,中学校,特別支援学校等で実施されるフッ素洗口・塗布には,以下のような問題点が認められる。
(1) 安全性
フッ素洗口・塗布には,急性中毒・過敏症状の危険性があり,フッ素の暴露量,年齢,体質等によっては,歯のフッ素症(斑状歯)の危険性も否定できず,また,全身影響への懸念も払拭されていない。
(2) 有効性(予防効果)
フッ素洗口・塗布の有効性は,従前考えられてきたより低い可能性があるうえ,フッ素配合歯磨剤が普及している現状においては,フッ素洗口・塗布による併用効果にも疑問がある。
(3) 必要性・相当性
むし歯は,急性感染症ではないうえ,その予防方法はフッ素洗口・塗布以外にも様々あり,むし歯が減少している現状においては,学校保健活動上,集団的にフッ素洗口・塗布を実施する必要性・相当性には重大な疑問がある。
(4) 使用薬剤・安全管理等(実施上の安全性)
集団によるフッ素洗口では,試薬が使用される点で薬事法の趣旨・目的に反した違法行為が認められ,薬剤の保管,洗口液の調剤・管理,洗口の実施等が学校職員に一任されるなど,安全管理体制に問題があり,実施上の安全性も確保されていない。
(5) 追跡調査
有効性・安全性について,追跡調査がなされていないし,そもそも,学校等での集団フッ素洗口・塗布は,追跡調査が困難である。
(6) 環境汚染
集団によるフッ素洗口後の排液により,水質汚濁防止法・下水道法の排水規制違反など環境汚染のおそれがある。
2 このような問題点を踏まえると,集団フッ素洗口・塗布の必要性・合理性には重大な疑問があるにもかかわらず,行政等の組織的な推進施策の下,学校等で集団的に実施されており,それにより,個々人の自由な意思決定が阻害され,安全性・有効性・必要性等に関する否定的見解も情報提供されず,プライバシーも保護されないなど,自己決定権,知る権利及びプライバシー権が侵害されている状況が存在すると考えられるから,日本における集団によるフッ素洗口・塗布に関する政策遂行には違法の疑いがある。
3 よって,当連合会は,医薬品・化学物質に関する予防原則及び基本的人権の尊重の観点を踏まえ,厚生労働省,文部科学省,各地方自治体及び各学校等の長に対し,学校等で集団的に実施されているフッ素洗口・塗布を中止するよう求める。
第11 結語 (本文の33頁)
当連合会は,1981年(昭和56年)の意見書において,事実上の強制,薬剤管理,情報提供,追跡調査等の問題を指摘して改善措置を求めたが,何ら改善措置が図られないまま,ガイドライン等を契機に,政府及び自治体によって,集団フッ素洗口・塗布の普及推進が図られており,自己決定権,知る権利及びプライバシー権の侵害の状況及び政策遂行上の違法の疑いを放置することは,もはやできない。
よって,当連合会としては,上述の諸問題を踏まえ,医薬品・化学物質に関する予防原則,公衆衛生政策における基本的人権の尊重の観点に鑑み,集団フッ素洗口・塗布を中止することが相当と思料し,冒頭記載の意見を述べる次第である。
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/110121.html (全文)